ふたつ星
「あんな人間にはあれくらい言ってやった方がいい。死ぬほど後悔する前に」
そう呟いた翔さんの瞳はどこか遠くを見ていた。
再び平穏が訪れた河原に私達は腰を下ろした。
「翔さんは、どうして毎日川を見に来るんですか?」
ジッと川の流れを見つめる翔さんについ聞いてしまった。
「川の流れは前にだけ進んで絶対に後ろには戻らないから。時間と同じだ。過去を悔やんでもやり直すことはできない」
視線を変えることなく翔さんは答える。
「だから川を見て自分に言い聞かせるんだ。二度と間違いを犯してはいけない。取り返しのつかないことを見逃すなって」
そう言った翔さんは寂しげで、触れたら今にも壊れて消えてしまいそうなくらい儚く感じ
た。
私は胸が締め付けられて、ただ翔さんの横顔を見つめることしかできなかった。。