ふたつ星


「お腹すいてない?」



お母さんが言ってくれる言葉も、お父さんの笑顔もまだ白々しく見える。



これがいつかは普通に見えるのかな。



本当に私のことを思ってくれていると思えるのか、それともこの不自然に慣れてしまうのか。




私は首を横に振る。



「もう寝る……」



そう言ってリビングを後にすると、後ろからおやすみと聞こえた。



「おやすみ」



反射的に答えると私は気付いた。



この2人に“おやすみ”と言われ、答えるのはどれくらいぶりだろうかと。



もう、記憶にも無いほど昔のことだと思う。



それなのに、急に言うなんて、私には機嫌取りにしか聞こえない。



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