ふたつ星
泡沫
寒い空気を切るように走る。
速く速くと心が急いた。
早く翔さんに会いたい。
一分でも、一秒でも早く。
川沿いを走っている時、川の流れを目にして翔さんの言葉を思い出した。
“川の流れは前にだけ進んで絶対に後ろには戻らない。時間と同じだ。過去を悔やんでもやり直すことはできない”
あんなに過去の自分を後悔している人を、どうして一瞬でも拒否してしまったんだろう。
過去は過去であり、今の翔さんとは違うのに。
確かに過去も翔さんであり、それは紛れもない事実だけれど、私の見た翔さんはもう“い
じめる側”じゃなかった。
手を差し伸べる強さを持っている人。
過去の間違いを認められる人。