お隣サマ。



微笑んだまま何も答えない会沢さん

あたしはそれを肯定ととらえた



「でも……瀬川真司は会沢さんが小学生のときにデビューしているんですよね……」


声が震えた
嬉しさからじゃない


涼太くんのあの悲しそうな表情の理由があまりにも想定外すぎたから



「瀬川真司は俺の親父の名前
俺は親父から瀬川真司を引き継いだ偽物だよ」


そっか……涼太くんは会沢さんをおじいちゃんじゃないって言っていたのはこういう意味だったんだ


涼太くんからみたおじいさんは会沢さんのお父さんだから……









「どうしてあなたが瀬川真司にならなくちゃいけなかったんですか……?」


「……話すと長くなるから、僕の部屋に寄ってくれえるなら」



暗くなり始めた空

それは今思えば会沢さんの心のようだった






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