お隣サマ。
「それから俺は今まで、悶々としたまま作家活動を続けた
素直に受け取れれば俺は親父になることができたんだって思えたんだけどね
残念ながらそうは受け取れなかった
俺はこのまま親父として作家活動を続けなければいけないのかな。って
光栄なことだけど、それって自分に自身に嘘をつくことになるんじゃないか。ってね」
肩をすくめる会沢さんは小さくため息をみせた
今まで完全無欠というイメージのあった会沢さんの鎧の内側を見ている気分になった
「……正直昔と今の作品の雰囲気は違うなって思いました
昔の瀬川真司は、登場人物の気持ちに入り込めないんです
バリアを張られているというか、本には書かれていない感情がある感じで……
でも、会沢さんの作品は違います
あなたの書く人にはちゃんと心がある……
登場人物自身になりきれるんです
どちらがいいということじゃないと思います
会沢さんには作品の1つ1つに会沢さんの優しさがあるから……
お父さんとの違いはそこなんじゃないですか……?」
驚いた顔をした会沢さん
そして次の瞬間には吹っ切れたような優しい表情があった
「そっか……」