きゅーぴっど②



「どうした桜ッ!」


バンッと音をたてて入ってきたのは、あたしの兄だった。


「お兄ちゃんっ!
何か学校帰りにあたしに話し掛けてきた人が、あたしの部屋に……!」


直ぐにあたしは少年の方を指差しながら、兄に泣きついた。
兄はあたしの示す方向をキョロキョロと見ると、


「……なんだよ、誰もいねーじゃんかよ」


と言った。
あたしはその様子に
「よく見てよっ!あそこにいるじゃない!見えないの!?」と狂ったように叫ぶが
兄はそんなあたしに戸惑うばかりだ。




「――…無駄だ」


ずっとこっちを見ていた少年が静かに口を開いた。


「言っただろう、俺は天使だってな」


わかったら、その無意味な行動を止めて俺の話を聞け

と、目で語りかけてくる少年に
あたしは得体の知れない恐怖で、身体が震えた。

様子のおかしいあたしが不安になったのか、
兄が心配してくれたが
「寝ぼけてたみたい、」とごまかして部屋から出ていってもらった。





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