アタシの人生に華が咲く
『え?バンソコ坊主は誰だ?』
『おれだよ!』
『はいよ、後でそれ返してね』
なんで?といった表情をする男の子に、“貸して”と言ったからだと説明した。
こどもは面白い。からかいがいがある。
われ先にと精算に群がるこどもたちに囲まれ、あたふたしていたときだった。
『奏介?』
『げっ!リョータ兄ちゃん!』
配達帰りのトラックに乗ったリョータが店の前に止まってこっちを覗き込んでいる。
『奏介、お前塾の時間じゃないのか?まーたサボってたな』
チビっこグループの中でも、よくうちに来る奏介(ソウスケ)は、宮内酒店の向かいにあるスポーツ用品店の一人息子だ。
奏介はよく、リョータに遊んでもらっていて、二人仲がいいのだ。
『今から行くんだよぉ!だからサボってなんてないよ!』
そういうと奏介は塾の鞄を持って走って行ってしまった。