アタシの人生に華が咲く



 『気をつけて行くんだよー』



 私は店の戸におっかかりながら、一生懸命に走って遠く小さくなってく奏介に声をかけた。



『塾かぁ……まだ小学3年生だよ、学校の勉強だけでも大変だろうに』



『ゆとり教育なんだから学校の授業だけじゃ足らないんだよ』



『勉強ってそんなに大切?』



『んー、少なくともオレとお前は必要なかったかもな』



『え、なにソレどういう意味?』



 リョータはハハッと笑いながら再びトラックを走らせ店に帰っていった。



 そもそも私の小さい頃は、この地元に進学塾なんてものはなかった。



 走って塾に向かう小さな少年が、私には可哀相に思える。



『時代か。年とったな私も……』



 そうつぶやき店に戻るのだった。
 


 ―――午後7時閉店。



シャッターを下ろして店の戸を閉める。



私の一日はだいたいこんな感じで流れている。



 実に平凡でまったりマイペース。そんな日常が私には合っているんだ。







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