アタシの人生に華が咲く



『あら、今日は鯛焼きのいい香りがしないわね』



 そう言いながら、店を覗き込み私の姿を探しているようだった。



『あ、マチコさん……ごめんなさい。いま焼きますね』



 私は、うなだれていた頭を起こして立ち上がった。


『どうしたの?大丈夫?具合悪そうだけど……』



 マチコさんが心配そうにたずねるが、私は『大丈夫、大丈夫』とだけ返して鯛焼きを焼き始めた。



 それから少しして、鯛焼きのにおいが立ちこめる。私は胃から込み上げてくるものを感じた。



咄嗟に口を手でおさえながら、急いでトイレへと駆け込んだ。



『あー……最悪。気持ち悪い』



 ぐったりしてトイレを出ると、マチコさんが眉間にシワをよせ居間にたっていた。



『小巻ちゃん、もしかして……赤ちゃん!』



 あら大変!と慌ただしく大きな声をだすマチコさん。



『え?いやいや……違いま……』



『なにー!小巻ちゃんが妊娠?』



 否定する間もなく、マチコさんの大声を聞き付けた、向かいの保おじさんが、さらに大騒ぎし始めた。






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