アタシの人生に華が咲く
この商店街は狭い。大声を出せば端から端までまる聞こえだ。
あっという間に話が伝わり、脇の通りを挟んだお隣りのはんこ屋さんや、
そのまた隣の山戸理髪店の人達、保おじさんとこのお隣りの田渕写真館のおじさんまで騒ぎを聞いて出てきた。
『保ー!小巻ちゃんが妊娠て本当か?』
『あぁ、今朝様子が違ったからよ、そうしたらこどもができたってマチコちゃんが今!』
『えぇ?相手なんていたのかしら?』
『全く見たことねぇけどなぁ』
みんながウチの前でありえない話で盛り上がっている。
『マチコさん……違うんだってば……』
具合の悪さと展開の早さに追いつけず、弱い声で必死に否定するも、みんなの声に、かき消される。
とりあえず外のみんなをどうにかしなくてはならないと思い、フラフラになりながらも歩きだしたときだった。
『小巻!』
大粒の汗をかいて息を切らせながら、リョータが人混みをかきわけてやってきたのだ。
そうだ、リョータなら、私の妊娠がありえないこと知っている。