アタシの人生に華が咲く
『おはよーさん!小巻ちゃん3時のおやつに、鯛焼き貰いに行くからお願いねー!』
『はーい』
昆布の佃煮と、冷凍の焼魚、そしてインスタントのお味噌汁に白米で朝ごはんを食べていたところ、ウチの裏庭に勝手に入ってきた婦人服屋の、のぶ世さんが焼きたての鯛焼きを予約しにきた。
『あ、そうそう、あんことカスタードを2つずつね』
のぶ世さんは、一度背を向けた体をくるりと返し、言い忘れた大切なことを付け足した。
『ふぁーい』
残りひとくちのご飯をかきこみながら私は適当に返事をする。
私の家は居間に寝室と台所しかない2Kの部屋に、じいちゃん、ばあちゃんの代から続く“佐久間屋”という駄菓子屋が併設された古ーい家だ。
店の通称は“サクマ”
店内は普通の駄菓子屋だけど、その端の方には小さなカウンターを挟んで、鯛焼きを焼き売りするスペースがある。
昔はじいちゃんが鯛焼きを、ばあちゃんが駄菓子を担当して店を切り盛りしていた。