スイートルームの許婚

~由可奈side~

愛斗が退職して、1ヵ月。


休みのない愛斗の元に私が行くハメに。


ダイヤモンドホテルと言えば、昔はウチのホテルと張り合ったライバルホテル。


敵地に乗り込むスパイ気分。


文学的に言えば、愛斗と私は『ロミオとジュリエット』。


『ロミジュリ』みたいには悲恋で終わりたくないけど。


私は黒のパンツスーツに身を包み、OLに変装して、ホテルのエントランスを潜る。



ベージュ系のマーブル模様の人口大理石の床をパンプスの踵でコツコツ鳴らしながら、歩き、支配人の愛斗を探す。


ロビーの中央には6月にピッタリのブルー系とピンク系の紫陽花が飾られていた。







< 218 / 289 >

この作品をシェア

pagetop