スイートルームの許婚
誰かが私の右腕を掴んだ。



そして、柱の影に連れ込む。



「待ってましたよ…由可奈お嬢様」



私の腕を掴んだのは栗原さんだった。



「愛斗は?」


「支配人室ですよ」


栗原さんは辺りを見回して、人の目がないコトを確かめた。そして、私をフロントの奥へと案内していく。



バックヤードの従業員専用エレベーターの中に乗り込んだ。



「あなたは一応…ドラゴンホテルの龍咲社長の令嬢ですし、出入りしてるのがバレたら困ります」



「一応って、私はちゃんとした令嬢よ!」



「そうでした。これは失礼」


栗原さんの声には抑揚がなく、適当な謝り方。キレるほどのコトでもないし、私はそのまま、聞き流す。










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