スイートルームの許婚
「あっち向いててよ!服着るから…」



「はいはい」



意外と素直に応じる愛斗を残念に思いつつ、私は下着を身に着けて、スーツを着込んだ。



「お前…先に俺の部屋で待ってるか?」


「部屋?」


「その扉の奥だ」



愛斗の資料棚の奥にあるドアを指さす。



「この奥に俺の部屋があるんだ…俺はこのホテルの支配人だし…ホテルを離れるワケにはいかない」



「ホテルに住み込むなんて…責任感、強いのね…愛斗は・・・」



「支配人は会社で言えば社長だぞ。この歳で…支配人になれるなんて思いもかけなかったから」



< 228 / 289 >

この作品をシェア

pagetop