スイートルームの許婚
大ちゃんは俺を切れ長の瞳で睨みつける。


「お前…誰に喧嘩、売ってる?」


首元の黒の蝶ネクタイを外して、ヤツも臨戦体勢。



眼鏡がなくてイラついていた。
ちょうど、俺の喧嘩相手には最適な人材。



二人で踊り場で喧嘩を始めた。


大ちゃん、大柄の割りには動きがスピーディで喧嘩慣れしている。


でも、俺の方が喧嘩の強さは上だった。


なんせ、俺の勤務していたホテルはニューヨークのスラム街のすぐそば、殺しなんて日常茶飯事…俺だって、何度も命が落としそうになった。



護身術として、習った空手は黒帯、ボクシングだってプロ並みの強さだ!


俺のアッパーカットがキマった!!



大ちゃんは防火扉に背中をぶつけた。




「て、てめぇ…?」


俺は呻く大ちゃんを尻目に自販機で缶コーヒーを買って部屋に戻った。








< 74 / 289 >

この作品をシェア

pagetop