スイートルームの許婚
「飯食いながら…泣くなよ」



「へっ?」


視界が霞んでると思ったら、私の瞳には涙が潤んでいた。



愛斗はテーブルにタッパーを置き、丁寧に蓋まで、開けてくれた。



「…さっきは悪かった俺も少し言い過ぎた…」



愛斗の方から私に謝罪。

その優しい声音に私の鼓膜が震える。



私の隣の椅子に引いて、浅く腰を下ろす愛斗。



「…」



鼓膜の震えが私の潤んでいた瞳のダムを決壊させた。




「泣くなよ…」



愛斗が指で私の頬に伝う涙を拭う。



「自分で拭く…」


私は膝元に置いていたナフキンで涙を拭った。
愛斗に優しくされたら、涙が枯れるどころか止まらなくなる。



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