手を伸ばせば、届く距離まで。



顔を上げろ。涙を飲み込め。


“自分”を、強く持て。


真樹も俺につられ、背筋を伸ばした。


「―――ああ。勝手に告られるより、勝負を受ける方がマシだ」


久野がまた、本を落とす。


どうでもいいかもしれないが、俺の本、大丈夫だろうか。


落ち着いて、記憶をめぐらせた。


―――華織。


俺は、華織という太陽に憧れて生きてきた。


そのすべてが今、試されるときだ。



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