手を伸ばせば、届く距離まで。



息をのんで、なるべく優しい声に切り換えた。


いつもの声は『感情がない』と言われがちだし。


なるべくは、華織にそう思われたくない。


「どうした?」


《あたし…つらすぎて、死にそうなの》


「死!?」


《もう、そんな真に受けないで…なんかこう、心が壊れそうなの》



あ、ああ…びっくりした。


《…あたし、真樹に悪くて》


華織は強かった。


けど、今きっと泣きたいんだろう、と察することができた。



< 172 / 557 >

この作品をシェア

pagetop