手を伸ばせば、届く距離まで。



「それで、勝った?」


「…負けた。ゴロゴロ転がって、川で水浸しになったよ」


「…ったく」


でもそんな話、初めて聞いたな。


「実は、圭に泣きつくのも我慢しようとしてたの」


華織は少し、うつむいた。


さらさらな髪が揺れて、風が穏やかに吹いていることに気づく。



「…圭を、信じたくないなんて…どうかしてた」



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