手を伸ばせば、届く距離まで。



「栗原悠。カウンセラーの先生よ。実績は素晴らしくて、学校で取り合いなの」


「………。」


カウンセラー…?


何だよそれ。ただの偽善じゃねえの。


無意識に、栗原という男に目がいった。


若い。頼りなさげな顔で、誰もが心許しそうな人だ。


けど…俺は。


「久野くん、もう行くの」


「待って」


―――…寝てたんじゃ、ねえのか。



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