手を伸ばせば、届く距離まで。



「一緒に笑うと楽しくて、気配りも誰よりも出来る。華織のことも、よく考えてた」



―――グン。


「…、…久野…」


圭の襟を掴んだ手が、わずかに震えている。


たぶんそれは、怒り。



俺がいなくても大丈夫なんだという、怒り。



「…だったら」


「久野?ちょ、ごめん。本当にすみません。何か余計なこと…」



「だったらアイツに譲れば良いだろ!!」



俺は、いらない。



< 220 / 557 >

この作品をシェア

pagetop