手を伸ばせば、届く距離まで。



――――――



「それじゃ、失礼しました」


一礼して、俺は久野の家から出た。


少し歩いたところで携帯を開き、メールを打つ。


「ごめんな。帰るよ」という本文。


携帯を閉じて空を見上げると、散った桜の木の間から、青空が見えた。



「……………」


でも気持ちは晴れない。


どこか自分に劣等感がある。自分にイライラする。



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