手を伸ばせば、届く距離まで。



「僕さ、力になれなかった生徒に恨まれた経験があるんだ」


「えっ」


真樹が純粋な瞳を瞬かせた。


ふわりと、栗原さんは不思議な雰囲気で笑う。


「けどその生徒は、社会に出て僕にお礼を言ってくれた。 『力になろうとしてくださって、ありがとうございました』って」


―――。


何とも言えない空気。それでも栗原さんは笑っていた。



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