手を伸ばせば、届く距離まで。



「久野くん?」


「…良いか。どんなに痛くても、苦しくても、心が綺麗でも…」


『久野。』


圭。圭が、引き受けてくれた


「同じ人間で、たまにはその心の傷が、自分を強くしてくれるんだ」


俺の傷。それは裏切りだ。


だけど、今は怖くなんてない。会うこともないだろう。


だから―――




「栗原。お前が全部の痛みを、引き受けなくたって良い。
 お前こそ綺麗な人間だよ。
 自殺した“彼”だって、絶対にお前を許してる」



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