手を伸ばせば、届く距離まで。



肩掴まれた。あくまで悪意もない弱い力で。


俺はいつもの無感情を司り、振り返りもせず会話する。


「ンだよ」


「単刀直入に言う。―――僕の“能力”が消えた」


「能力?…あ。ぅ!?嘘だろ!?」


やっぱり思わず振り返った。


…!?


栗原が、泣いていた。


と言うか、涙を端麗な顔に流しながら、笑っていた。



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