手を伸ばせば、届く距離まで。



…何も考えられない。


ただ感情だけが、渦巻く。


だから俺は思わず、無意識に父親を殴っていた。


―――がっ


床に頭を打ち、父さんは顔をしかめる。


俺が殴った頬は、仕方なさげにさすっていた。


「っ、…今さら…!」


怒りが、渦巻く。


もう、やめてくれ。


俺は今やっと、幸せになれたのに、なのに―――。



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