手を伸ばせば、届く距離まで。



「あ、時間だ。行かなきゃ遅刻しちまう」


「ちょ、圭」


玄関に駆けると、華織も後を追って来た。


悲しみの、鬼嫁のもろい裏側が容易く表れる。


俺は、ふっ、と笑って一歩華織に踏み出した。


――――ちゅ…


唇を重ねると、華織は一瞬で固まった。


俺は唇を離し、笑う。


「け、圭…」


「今日は早く帰るから。ちゃんと美味しい夕飯作っといて」




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