手を伸ばせば、届く距離まで。



「え?それってどういう…」


―――ガシャン


ふと、校長の話が行われている途中に、扉が開いた。


体育館内の中学生は、ざわざわと背後に目をやる。


あ―――


「久野!」


少し茶色がかった髪に、無愛想だが端麗な顔。


それでも、面白げに唇を歪めるのは久野の癖だ。



黒いスーツに身をまとった久野が、扉に立っていた。



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