手を伸ばせば、届く距離まで。



「悠生…!」


駆ける足音。


空っぽの頭に、幾度も流れる二人の声。


「真樹?」


俺、が


あの子を寄らせてしまったから…


俺じゃなく


「真樹…」


「華織。そっとしておこう。医者に聞いてみよう」






―――橘が死んだ。





俺のはずだったのに、橘は庇って死んだ。


どうして―――。



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