手を伸ばせば、届く距離まで。



しばらく、静寂だった。


口を開いたのは華織で、向こうを見て名を呼んだ。


「悠生…」


起きた悠生が、覚束ない足取りでこちらに来ていた。


「ぱぁー、まーまーぁぁ」


少し、泣きじゃくっている。


目が覚めて一人だったから、寂しかったのだろう。


「悠生…ごめんね」


泣きながら、華織が抱き上げる。


悠生は安堵したように、一緒に泣き出した。



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