手を伸ばせば、届く距離まで。



しばし歩いてから振り返ってみると、華織がまだ見送りを続けていた。


幸せそうな笑顔。


なあ、俺はそれを見守るだけでいいんだよな。


割り込む、資格もないから。


華織の幸せは、真樹があってなんだ。


「…それ、じゃあ」


また、別れを口にする。


涙が溢れそうになって、あわてて前を向いた。


太陽。


そうだよ…見るだけなんだ。


俺は、幸せだったんだ。



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