手を伸ばせば、届く距離まで。



「浪人だけはやめなさいよ。家には、借金が残ってるんだから」


「…けど…」


「けど、何?」


ひざが震えてた。


圭への怒りか、自分への悔しさか、嫉妬か。


答えは、全部だ。


「圭が行ったら…俺…華織は…っ!」


「…変な意地なら棄てて。自分だけを考えなさい」


…父さん。


俺の、父さんのせいだ。


ぜんぶ、ぜんぶ…!



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