生まれ変わってもキミが好き【完結】
そして
そんな相手がもう1人、前世にもいたの。
「あたしの好きな人は……遠い人。ぶっきらぼうだけど、意外と優しくて、面倒見が良い……たぶん、好きになっちゃいけなかった人」
日下先生の、授業中の後ろ姿を思い出す。
あの広い背中を見て、何度ため息をついただろう。
横を通り過ぎる時、何度あの手に触れたいと願っただろう。
こんなに近くにいるのに、気が遠くなるくらい、遠い人。
「好きになっちゃいけない人なんて、いないよ」
沈黙が続いて、不意に深田くんが、ぽつりと呟いた。
あたしはまじまじと、彼を見る。
いまのって、慰められたの、かな?
「……なーんてね。俺は清春の味方だから、あんまりこういうこと言いたくないんだけどさ」
「清春の、味方?」
「うん。ちょっとごめん」
深田くんはなぜかケータイを取り出して、電話をかけ始めた。
静かすぎる部屋に、呼び出し音が微かに響く。
「あ、もしもし? いま何してんの?」
あたしは通話の邪魔にならないように、静かに机の上を片付けた。
深田くん、もしかして用事あったのかな。
ますます申し訳ないなあ。