生まれ変わってもキミが好き【完結】
「そうか? ……焦らないって決めたからかもな」
「焦らない……?」
よくわからなくて首を傾げた時、予鈴が鳴った。
日下先生が、あたしをじっと見つめて微笑む。
「この15年を思えば、いくらでも待てる」
はっきりとそう言って、歩き出す。
あたしの左脇を通り過ぎる時、肩を叩こうとしたのか左手が伸びてきたけど、
なぜかその手はすぐに引っこめられた。
「……小鳥遊も早く戻らないと、授業に遅れるぞ」
「え? う、うん」
「じゃあな」
微かな煙草の香りを残して、日下先生は廊下を歩いていった。
あたしはその背中を見送りながら、先生の言葉の意味を考えた。
15年。
あたしが生まれて、15年。
あたしが死んで、15年。
あたしの知らない、日下先生の15年。
芽衣子が言った通り、先生は気づいてるんだと思う。
あたしが一体、なんなのか。