生まれ変わってもキミが好き【完結】
死んだあの日だって、喧嘩したんだよ。
それなのに……。
「結局あたしは、亡くなったその子には勝てないのかもね」
「皐月さん……」
「最近それを感じて、らしくなく焦ったのね。お互いの両親を使って、結婚する流れに、強引に持っていこうとしちゃったの。
そこから余計に避けられ始めたわ」
皐月さんは左手に、視線を落とした。
薬指には光る指輪。
それを撫でながら、頭を振る。
「バカなことしたって、後悔してる。年齢のこともあって、不安になったのよ。これまで何度も結婚を意識する場面があったけど、琉一は1度だってそれを口にすることはなかったわ。
このままプロポーズの言葉は、一生聞けないんじゃないかって……」
だんだんと、皐月さんの声が泣きそうに震えていく。
あたしの心にその声は、鉛になって落ちてきた。
「あたしはいつも前に立って、琉一を見てきたわ。
でも琉一は立ち止まったまま、あたしの方は見ずに、ずっと後ろを向いている気がするの」
「後ろ……」
「なんだか少し、疲れちゃった。
あたしはそろそろ、前を向きたい」