生まれ変わってもキミが好き【完結】
ハンカチで目元をぬぐう皐月さんは、強い人だと思う。
皐月さんが『るいち』を引っぱってくれていたから、
今日まで後ろを向きながらでも進んでこれたんだ。
ありがとう。
『るいち』を好きになってくれて、ありがとう。
嫉妬も羨望も、余計なものはすべて、
いまこの瞬間消えた。
まっさらな気持ちで、お礼を言いたい。
「ありがとうございます。皐月さん」
「え……?」
「あたし、日下先生を呼んできますね」
戸惑う皐月さんに微笑んで、立ち上がった。
でも皐月さんは、困ったように首を振る。
「いいのよ凛ちゃん。もう」
「皐月さん。日下先生は今日も、左の薬指に指輪をしてました」
あたしは休み時間のことを思い出した。
日下先生があたしの横を通り過ぎる時、不自然に引っこめた左手。
そこにはまだ、銀の指輪が光ってたんだ。