寄り道アバンチュール
「萩原さんは朝からここで何してたんですか」
「ラジオ体操」
「…へぇ」
「知らないの?朝方爽やかな日を浴びつつ体動かす男は逆ナンされやすいんだよ」
「…逆ナンされたいんですね?」
「全然?」
嘘つけ。
「鈴木さんは今帰って来たところなんでしょ?」
「え、まぁ…」
「近頃の子は朝帰りが当たり前なの?本当に全く……僕も朝帰りしたい」
「すればいいじゃないですか」
「本当だよね、まぁ、僕は友達がいないからしたくてもできないんだけどね」
"朝帰り"の大半が友達との遊びというよりは男女関係の…、と言おうとしたけど口から零れ出る直前に飲み込む。
墓穴はカンベン。
まだまだ若いくせに「いいなー若返りたいなー」とひとりごちて、ふと思い出したように先ほどから手にしていたナイロンの袋を差し出した。
「…なんですかこれ?」
「スルメと桜エビのかき揚げ。おうどんに入れて食べると美味しいよ」
「あ…ありがとうございます。萩原さんの手作りですか?」
「そう。ほら、僕家庭菜園やってるじゃん?良かったら食べてね、じゃぁ」
小さな子供のように手をぐんと伸ばして別れを告げると萩原さんはアパートの敷地内にある自分の家へと帰って行く。
「……かていさい、えん…?」
スルメと桜エビが?