恋しても、愛しても、夢は見ないから

会社をでて電車に乗る。


ゆっくりと走る電車の中で
暗闇に流れるネオンを見た。


綺麗だった。


久しくこんな光景を
見ることすら忘れていた。



電車を降りてバス停に並ぶ。



バスを待つ時間が
やけに長く感じていた。



なんだか待ちきれずに、
列から外れて道を歩き出した。



運動不足だ、ちょうどいい…



数分歩くと、あの公園に差し掛かった。



足は躊躇することなく
公園に吸い込まれるようにして
噴水の前で留まった。




深い溜め息と共に
煙草を一本ポケットからだす。





ゆっくりと吸った煙草は
思いの外早々とその長さを失った。




そしてまるで線香花火のように
紅い光はポトリと儚く消えていった。



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