恋しても、愛しても、夢は見ないから
『あら?優ちゃん歩いてきたの?』
家に帰ると、途中で降りだした雨に
かなりコートが濡れてしまっていて、
妻がタオルを慌てて持ってきた。
今週はそういやずっと歩きだったな…
彼女はやっぱり水曜日に
あの場所へは来なかった。
もしかしたら…
そんな思いも、すぐに褪せた。
彼女にとっては気まぐれのうちの
些細な出来事の1つなんだろう。
そう思った。
ただ残るのは、彼女のあの
震えるように濡れるあの瞳だった。
来週はバスで帰ろう。