恋しても、愛しても、夢は見ないから
ひとめだけ
『…唯!もう帰るのか?』
最終授業のチャイムが鳴ると同時に、
鞄を素早く手にして教室を出ようと
したとこで海斗に声をかけられた。
…面倒くさいのが来た。
少しうんざり気に振り向き
『…そう。チャイム鳴ったでしょ?
帰っちゃいけない理由あるわけ?』
携帯に表示された時計が
さっきから気になってしまう。
『…いや、無いけどさ…。
今日バスケ部の連中とカラオケ行くんだけど、
行かない?』
『…行かない』
私がそう答えると、
明らかにしゅんと落ち込むような顔になった。
『…そんな顔してもいかないからね!
だいたいバスケ部の人なんて全然知らな…』
『ゆ〜い!海斗くん可哀想じゃない!』
いいかけた途中でユカが割ってきた。
小野友加里。
同じマンションに住んでいて、
小学校からの付き合い。
派手めの外見とは裏腹に
面倒見が良くて姉御肌なくせに
程よく無関心でいてくれるから気があっていた。
『あんた噂になってるよ〜』
意地悪くからかうように笑いながら
ユカは寄り添うように近づいて耳打ちしてきた。