恋しても、愛しても、夢は見ないから
先輩は何かを考えるような仕種をして、ニヤリと私を見た。


『俺ならなれると思うよ』


『…は?
………何に??』


意外な返答が帰ってきたから
私は質問した言葉すら一瞬忘れそうになっていた。


先輩は全てを見透かしたように
またニヤリと笑って続けた。


『だから”おじさん”に。
唯ちゃんに、俺の一番大切なものをあげるよ』


先輩はそう言うと、
指にはめていた、あのキラキラした指輪を抜き取って私の親指にはめた。


指輪はずっしりと私の指にはまったけれど、ぶかぶかな指輪はすぐにでも指をすり抜けてなくなってしまいそうだった。


『俺の大事なもの』


そう言って幸先輩は指輪を包むように私の手を優しく包んだ。


それはまるで触れれば溶けてしまう雪を戸惑うように触るような、触れるか触れないかぐらいの強さだった。


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