恋しても、愛しても、夢は見ないから


『映画は面白かった?』


聖はベッドの上に座って
私を覗きこむように見上げた。



眼鏡の縁から覗く涼しげな目が
ゾクリとするような色気を発する。



その瞬間からじんわりとした
金縛りにあったように、

身体がいうことをきかなく
なっていくみたいだった。




『うん。

優しいおじいさんの話だった。』


『…唯は昔から
そうゆうのが好きだからね。』



『…そうかな?』



『そうだよ。』




甘い痺れの中で
催眠術にかかったように
ひとつひとつ言葉を繋いでいく。





それから?
と先を促すように

聖は私の目を見て
静かに私の言葉を待っている。



こうやっていつも、
とりとめもなく私達の会話は続いていく。




今日あったこと、

今何を思っているか、

嬉しかったこと、悲しかったこと…



聖は私の頭の中を全て言葉にさせて
私に吐き出させる。



身体も心も丸裸にされていく。




頭の中の気持ちが全て吐き出されると、

気持ちは空っぽになり、

いつも…

ただただ目の前にいる聖の
温もりだけを感じたくなっていた。




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