恋しても、愛しても、夢は見ないから
タバコを拾おうと屈んだ瞬間、
光に誘われるようにふと横を見た。
目の前には、茂みがぽっかりと開ける所があって、
切り取った絵のように鮮明に噴水を映し出した。
月明かりが噴き上げる水に反射して、時々キラキラとイルミネーションの光のように輝いている。
その噴水の縁に重なりあう影が
不規則なリズムで動いていた。
…カップルか?
あまりにも幻想的な光景に
一瞬、ただひたすらにその光景を見ていた。
噴水はここから意外と遠いし
水壁を隔てた向こう側のこと、
僕の目が恐ろしく良いわけでもなく、
そこは夜の暗がりだったのに
彼女の恐ろしく綺麗な顔が
はっきりと見えた気がしたんだ。
噴水の縁に座った男は
向かい合わせにして上に乗っている女を優しく触れる。
二人だか一人だか解らないほど
二人の影はひとつに重なっていた。
不規則なリズムを刻みながら、
次第に女の身体は綺麗に弓形になり動きを止めた。
男の手がぴったりと
女の身体を抱きとめていた。
見えていたわけじゃない…
でも…
それは不思議な確信だった。