恋しても、愛しても、夢は見ないから
『またそんなこという…、
急に部活がなくなったからさ、
空いてたらと思って!』
海斗は私の憎まれ口に苦笑し
それでも怯まず誘ってきた。
妹をあやすような態度。
温かな家庭に育った証拠に思えた。
『…悪いけど。
これから約束あるから』
『…そっか。
…ごめんな、急に…
……や、デートは邪魔できないもんなぁ』
からかうように、
そして探るように言う海斗に
『そ。
急ぐから、じゃーね!』
私はにっこり笑って
海斗に手を振っていた。
『え…、ああ。またな!』
その瞬間の海斗の微妙な笑顔を横目に、私はさっさと教室を出ていった。