恋しても、愛しても、夢は見ないから
次の日、

いつも通りに家を出て
いつも通りにバスに乗った。


社会人は飽きることなく
この繰り返しか…。


ため息混じりにバスに揺られていると、横の男子高校生がそわそわと何かを話している。


きっと…


俺が乗るバス停の2こ後のバス停から乗ってくる女の子のことについてだろう。


彼らから時折聞こえてくる話題は彼女の話題が多かったから。


彼女がバスに乗り込むと
周りの空気が色めき出す。


程よく黒い長い髪が歩く動きに合わせて揺れ、吊革に触れる指は白くて細い、全体的に折れそうなほど華奢な身体と雪のように透明度のある白い肌に人形のように整った顔立ちは、その年ごろの男じゃなくても目を奪われるだろう。





……俺は、
あの夜の幻想的な光景の主は
彼女じゃないかと思っていた。






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