恋しても、愛しても、夢は見ないから
彼女は無表情に一瞬だけこちらを見ると、そのままずんずんと歩みを早めて視界から消えていった。



驚いた。

やっぱりあの日のは
彼女だったのかもしれない。




……まぁ、
だから何だってコトはないけど。




短くなりかけたまだ火のついているタバコを消し、もう一本を取り出した。




…これを吸ったら帰るか。




雪は少しだけさっきよりも
強さを増していた。



この分じゃ、夜になるにつれて
大降りになりそうだ。



明日の出勤は早めに出ないとな。


雪が降って喜ぶのは
子供と犬ぐらいか…。



タバコを吸い終え、携帯灰皿に押し込むと、そろそろと重い腰を上げた。



噴水を離れるときに自分が座ってた場所と真逆の所に、彼女が座っていた。




彼女の頭には雪が
少しだけ積もっていて


彼女は傘をさしていなかった。




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