恋しても、愛しても、夢は見ないから
『…唯ちゃん?』
……??
あ!
振り返るとそこには
優一さんがいた。
少し心配そうにしてるのに
隠すように笑顔を作っていた。
幸先輩は優一さんを不思議そうに見つめて様子を見ている。
『……幸先輩。
これから用事があるので…もう…。』
幸先輩はしばらく黙って
ふぅ…と一息ためいきをつくと
『今日言ったこと忘れないで』
そう言って、私を掴んでいた手を静かに離した。
優一さんは遠ざかる先輩を気にしながら、
『………ごめん。
なんだか困っているように見えたから。』
そうだ。
この人はいつもそう。
困っている人がいたら
手をさしのべる。
それは、誰にでも。
その優しさが好きで、
その優しさが寂しかった。