恋しても、愛しても、夢は見ないから
ずっと
『………
邪魔しちゃったかな?』
『…いいえ。』
ほっとする顔。
『ちょっと強引な人で…
でも大丈夫』
『…彼氏?』
『………………はい』
『…大丈夫?…送ろうか?』
『…ん?』
スーツの裾を引っ張ると
子供を心配そうに気遣うような顔で見る。
おでこを貴方の胸につける。
『……本当に大丈夫?』
『…ギュッてしてくれたら
大丈夫になるかも。』
『…………………!
まったく…。大人をからかうな。』
悪戯っぽく笑うと
困ったように微笑んでそう言った。
優しい手が頭を撫でる。
優しいこの手は
私を抱き締めることはなかった。