恋しても、愛しても、夢は見ないから

『こんな可愛いコいじめて〜』


ビールを片手にゆらゆらと振りながらからかうように聖をつついている。



『……あっちいってろ。』



取り合わない聖をつまらなく思ったのか、その女性はリビングからでていってしまった。




『……聖、あのひと…』



言いかけたとこで
聖に遮られるように



『……で?
唯はどうしたいの?』



急に胸が締め付けられる。

さっきから一度も笑わない聖。

突き放されているのがわかる。




涙がまた溢れてくる。




『…あの人は誰?』



『高杉さん。』



『…どこで知り合ったの?』



『…前に携帯を拾ってもらったの…』



『…いつから会ってるの?』



『………』



『…唯はその話し、してくれてないよね?』




『…………』




『…はぁ、……もうこなくていいから』






ズキン…


胸の奥が鷲掴みされたようにぎゅっと締め付けられるようだった。




『……いやだ…ぁ!
これから話すから!お願い…!

嫌いにならないで……!』





『………唯。』





聖は相変わらず表情は変えずに
でも少し声に柔らかさを含めて言った。





『…唯、…唯が僕よりも大切なものが出来たなら、もう一緒にいるべきじゃないんだよ。

大丈夫、唯には僕がいなくても』




聖は静かにそう言った。



足元がぐらつく。

突き放されたような感覚に

一気に目の前が真っ暗になる。




『唯もわかってたから言わなかったんだろ?

…さあ、もう帰りな?』






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