君の瞳に魅せられて ***春日の恋***
隣の部屋に越してきた万里は小学生に見えたが、

中学2年生だということが分かった。

心臓病の手術をしたりして、学校に余り行っていない。

「ヒッキ-なの。」

と自虐的に笑う。

くるくるとよく動くリスっぽい瞳が印象的で

そんな事情を抱えているとは思えない。

「学校行っても授業についていけないし、

倒れたり、早退したり、行っても迷惑かけちゃうんだ。

だんだん行きにくくなって登校拒否になったの。」

バンビに餌をやりながら、俺に話して聞かせる。

会ったばかりの他人でも話したい彼女は、きっと寂しいのだと思う。

ふと、菜々美の顔が浮かんだ。

「学校行かなくても、勉強はしたほうがいいよ。

 もし、万里ちゃんさえよければ、家庭教師紹介しようか?」

えっ

と驚いた顔したがちょっと考えてから、

「お母さんに聞いてみる。

たぶん、喜ぶかも。ずっと心配かけてるから。」


「うん、俺はもう大学4年なんで見てあげられないけど、

友達が3年にいるんだ、頭いいしやさしい人だよ。」


「女の人?」


「そうだよ。」


「彼女?」


「いや、親友なんだ。」

さっきの、ショックでやりきれない気持だった俺は、

きっと、やりたいと言うだろう菜々美を想像する。

ふわっとした、想いが膨らむ。

新しいつながりにまたひとつ期待する。









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